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 腕時計を指差される。 「……そうですけど、何か?」 「安物じゃないからな。大事にしろよ」 「………はい」 「そういうことか……」  呟いてコーヒーを飲んだ。 「俺とあいつは似ているだろう」  不意にこれまでとは違う話題に戸惑う。 「よく似ていますね」 「座ったらどうだ。空也が帰ってくるまで、ずっと立っているつもりか?」  警戒しながら一番離れた椅子に座った。 「あいつよりも俺の方が地位も財も上だ。どちらでもいいなら俺のところにこい。働かなくても生活の面倒はみてやるぞ」 「言っている意味が分かりません」  正直に答えた。   空也と似ていることがどうしてこの人のところに誘われる理由なのかが分からない。 「私は空也さんに養ってもらっているわけではないですし、嫌々働いているわけでもありません」  海さんが首を傾げる。 「じゃあ何で空也と同居しているんだ?」 「え?」 「財産目当てで無かったらどうして空也と同居している?」  何か勘違いしているようだけど、ここで『恋人同士』とも言えない。
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