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ドサリ、と音を立てた。
桜がなくなっている。桜並木が消えている。ゆきみは持っていた鞄を落とした。呆然。
何が起こったのか。桜と向き合ったあの日から、1年が経った。窓をあけて2階で風を少し浴びなら勉強をするゆきみ。買い物から帰ったお母さんが声を大きく荒立てるのを聞いた。
「桜が!桜が無くなってる!」
ゆきみは事情を聞いた。
「どうしたの?何事?」
「とにかく見てきて。」
慌てた様子の母の姿を怪訝に思いながら、ゆきみは桜並木へと急いだ。
どんなことが起きているのか、すぐには認識できない驚愕のことが起きていた。桜並木に並んでいた桜たちが根元からザグリと切られているのだ。がらんと視界が広がっている。ピンクに華やいでいた河川敷が嘘のようだ。野次馬も多くきていて、警察の姿が見える。
どうやらあとから聞いた話では、夜中のうちに行われた犯行だった。斧でぐさりといかれたのだ。また次の日、道をとぼとぼと歩く。あの木々たちの賑やかさが消え、がらんとした道は、ひどく物悲しいものだ。
切り取られた幹の元はあまりに残酷で、この出来事はゆきみにとって、大きな衝撃となった。いつも見守ってくれていた桜がいなくなる。その日から心にぽっかりと穴が空いたようだった。
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