大江戸ガーデニング戦争

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 山桜の多く咲くこの染井村には伊勢津藩藤堂家の下屋敷があり、その藤堂家ですら庭に桜を植える事はしなかった。  大和国郡山藩の藩主柳沢保泰、下屋敷として常用しているのはもちろん六義園だ。 「六義園を改修するって話ですかい…」  あまりにもスケールがデカすぎて辰之助は声を失った「秘策がある」あのとき寅政が言った秘策とは六義園に吉野の桜を植え替えるという途方もない策だった。  不吉とされる桜だが、権現様の御神木である吉野の桜なら話が違ってくるのであろう、ただでさえ完成されている六義園に権現様の御神木の桜を植え替えるなんて、まさに鬼に金棒である。 「まさか松木屋の後ろ盾が柳沢様だったとは…」 「弟子の事は知っていても孫弟子までは知らなかったのであろうよ…」  がっくりと肩を落とす甚八はまるで親に叱られた幼子のように涙を落とした、それを見た辰之助の目にメラメラと闘志が湧き上がる。 「親方!柳沢様がなんだってんですかぃ!子は親を越えるもんです、柳沢様を、六義園を越える庭を、造りましょう!」 「た、辰之助」 「うむよく言った!辰之助とやら、我が藩が植え替えるのは枝垂れ桜で良いのだな?」 「はい、以前山で見た枝垂れ桜なら例え吉野の桜が来たって枝ぶりじゃあ負けませんよ」  
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