アンチーブの街

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 かなり高い位置に腰があるのにもびっくりだが、それよりも、このくそ暑いのに皮のパンツを履いているなんて相手の正気を疑ってしまう。  どんなかっこつけ男だよと優吾はげんなりしながら、嫌でも目に入る信じられないくらい長い脚を見下ろし、怖いものみたさで遡っていくと、190cmはありそうな背の高い男が、鋭い目つきで優吾を睨んでいた。  驚いて声をあげそうになるのをぐっと堪え、優吾は、何だよと目で問いかけた。  骨格や顔つきからして、ゲルマンだろうか?  プラチナブロンドの後ろを刈り上げトップをツンツンに立たせた髪形と、細くて吊上がった濃紺の瞳が、獰猛な雰囲気を醸し出していて、さっき海辺で会った男よりも、この男の方がよっぽど獣のように見える。  フランス映画はめったに見ないが、出演していたフランス人女優は美人というよりかわいい感じで、フランス人男優も目が大きくて優しいイメージだったように記憶している。  なのに、実際にフランスに来てみれば、どうしてこうも次々と野生の雄っぽい奴らに絡まれなければいけないのだろうか。まったくもって、この先が思いやられる。  それでも負けじと相手を見上げていたら、栗色の髪の店員、こちらは優し気な青年だけれど、その店員が二人の間に入り優吾を睨みつけている男に向かって何かを言った。  大男の腕が青年の腕を掴んで、グイっと引き寄せる。  危ない! と叫びそうになった優吾の目の前で、大男が青年を抱きしめ唇を奪った。  がっつりと! 何と、むしゃぶりつくように。  唖然とする優吾の前で、角度を何度も変えて大男は深く青年の口内を味わっている。青年のそった背と染まった頬が堪らなくエロティックで、優吾は目が離せなかった。
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