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殺し屋という仕事柄そこそこ人を殺してきた。そのなかで、徹底的に失敗をして命からがら逃げ帰ったこともあった。ぼろぼろの雑巾みたいな無様な姿だったが恥だとは思わない。 そんな俺ですら、さすがに羞恥心が勝る。 「じゃあDカップって叫べばいいよ」 「具体的なサイズ出すなよ。変態度があがってるじゃねぇか」 「いっそ、首筋とか腰のくびれとか。ふくらはぎ? うち太もも?」 「殺す相手がいきなりそんなの言い出したら俺なら一瞬動けなくなるぞ。ドン引きし過ぎて時間止まるだろ」 「絶体絶命の場面でそういうの叫ぶって一種の性癖みがあるね。深い」 ぱちゃぱちゃの浅瀬だ。 「なになに。なんの話してんの。俺さまくんも混ぜてくれめんす」 軽薄な声とともに俺の左隣に座り込んだ人物がいた。 俺も明石も目を丸くして当人を見る。それは髪をシルバーに染め、おびただしい数のピアスを着けた若い男。驚く俺たちににたにたとした笑みを向けてくるのは、(へび)という名の同業者だった。 足音も気配もなにもなかった。唐突に湧いて出て来た。 「蛇、お前なんでここに」 「健康のために毎日お散歩してんの」 「絶対ウソでしょ」
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