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あたりに物音はしない。波音を聞きながら、俺たちはこの場を去ろうと動き出す。慎重に辺りを伺いながら、建物の影をこそこそと移動していく。 人気のない倉庫が立ち並んでいる。建物のあいだに横たわる道路を横断しようと、物陰から一歩出たところで。 「おい、そこで何をしている!」 怒声が響く。振り返ると、建物二階の外通路に男がいた。通路にはドラム缶が無造作に置かれていて、物陰にあった男の姿を見逃したようだ。 地上の俺たちに向けって銃口を向けようと腕が動く。 それよりも早く、明石が叫んだ。 「あっ! おっぱいがいっぱい!!」 指を差された男は反射的に振り返った。 俺は落ちていた拳大の石を力いっぱい投げつけた。鈍い音をあげて男の背中に突き刺さり、敵は苦鳴を漏らしながらドラム缶にもたれて崩れ落ちていく。 俺たちはすぐさま走り出した。 「ごめんね。ホントはおっぱいはいっぱい無いんだよ」 「てゆうかね、その呪文フツーに強過ぎ。だって突然言われたらマジで意味わかんないもん」 走りながら明石と蛇が話している。
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