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秋口の青空は高く、ちぎれ雲が流れている。潮の香りを含んだ風が心地よく吹いていて、波音のなか、海上を行く船舶の汽笛が遠くに聞こえてくる。 俺と明石(あかし)は膝を抱えて並んで座っていた。 港湾に面した工場地の片隅を走る、いくつもの太いパイプ。その物陰に隠れていた。 息を潜める。辺りの物音に耳を澄ます。追手の気配に最大限の注意を払う。秒速で擦り切れていく神経を、集中力と緊迫感でどうにかつなぎ留めていた。 「ねぇ城島(じょうじま)。こういうときって逆に大きな声だしたくならない?」 相棒の明石はそんなことをしれっと言い出す。その表情はいつも通り緩く、ちょっと笑ってすらいた。一応、声を抑えているから状況はわかっているらしいが、ちょっとイラッとする。 「あらんかぎりの大声で、おっぱーい! って叫んだらどうなるかな」 「敵に見つかって死ぬ」 「おっぱいがいっぱい」 「死にたいの?」 俺は大きなため息をついた。身体の強張りが抜けて行く。阿呆なことを抜かしているヤツのとなりで神経を尖らせるのが馬鹿馬鹿しくなる。 「……それはちょっと恥ずいな」
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