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2 イケメンスパダリ旦那ってなんですか?
付け焼き刃だったがオメガの知識は、事前に少し入れてきた。
といっても周りにオメガなんて者は居ないので、病院でもらった冊子、オメガとはなんちゃらというものと、母親が好きなアルファオメガものや、運命の番なるドラマを数本見せられ、正樹はそこでオメガの勉強をさせられた。
母親はベータだったが、実は祖母がオメガだったから、隔世遺伝なのだろうと、オメガになった日に言われた。
――ってか、ばあちゃんオメガだったのか!? 知らなかったよぉぉぉ!
正樹の母は、自分の母親がオメガということもありオメガについては詳しく、オメガへの理解も深い。そしてもしかしたら息子もオメガなのではないだろうかと疑っていたことを、正樹がオメガになったと聞いた時に暴露した。
――なんだよ! ってか、俺どっからどう見ても男の中の男だよ!? 母さんには、どうして俺がオメガに見えたかなぁ。
母は年の割には可愛らしくメルヘン脳なので、恋愛もの、特に男同士の話が好物で、むしろ息子がオメガと判明した時、イケメンスパダリ旦那を捕まえなさいと言った。
――それは、いったいなんのパスタ料理の名前デスカ?
入学式までの間、こっぱずかしいドラマを母親と一緒に強制的に見せられ、終始真っ赤な顔でドラマを見る羽目になった。
年頃の男子が母親と男同士の、しかも性的に際どい恋愛ドラマを見せられるなんて屈辱と思いつつも、親に絶対服従な正樹は逆らうことができなかった。
そんなドラマのような、ファンタジーな話は物語だからであって実際は違う! 正樹は母親に、凡人の中の凡人、キングオブ凡人のオメガに夢見るなと言い放ち、両親の心配をよそに、中学の延長のような気持ちで入学式を迎えたのだった。
高校に入ってから、アルファやオメガとはどんな感じなのだろうとドキドキしながらも、発情期もまだな正樹には関係もなく、今までと同じようにベータ男子として振る舞った。
クラスでも仲のいい男友達もできたし、誰がアルファだろうとかオメガとか自分には興味がなかった。バース性は敢えて明かすべきものでもないらしいので、そんな存在は忘れてあっという間に一ヶ月が過ぎたのだった。
だが男子高校生たるもの、女の子には興味があった。小さくて可愛い彼女が欲しいとクラスメイトに話したら、本気で驚かれたことに、むしろ正樹も驚いてしまった。
「えっ、なんなの? その反応、あっ、もしかして俺ってもう彼女持ちに見えていた?」
「は? どう考えても見えないわ、ってか彼女は無理だろう」
友人たちは、正樹を可哀想な童貞を見るような目で見てくるではないか。そこまで悪くないと、自分のことを認識していた正樹は、女の子は自分みたいな男は嫌なのか!? と疑問がよぎった。
中学の時に女子から告白されたこともある。
その時はもちろん女の子を抱きたい、童貞を卒業したいという気持ちはあったが、なんとなくまだ恋愛には目が向かなかった。だがもう高校生だ、そろそろ筆下ろしをしてもいい頃だろう。高すぎも低すぎもしない身長で、日本人の平均はある。平凡だが、正樹は母の教えにより、身だしなみが常に気を付けていて清潔感だけは人一倍、気にしていた。
自分の唯一のチャームポイントも知っていた。それは癖毛にしてはうまくまとまって緩めのパーマをかけたように見えなくもない髪の毛だった。平凡だが、髪はふわふわで触り心地がいいと、クラスの女子たちが良く髪を撫でてくれていた。
――気持ち悪い男の髪には可愛い女子は触らないだろう?
ということで自分はそこまで悪くないと思うが、そんな反応をされると少し自信がなくなる。
「俺って女の子が嫌うほど、そんな醜い?」
「いや、そうじゃなくて、正樹はどう考えてもアルファとしか付き合えないんだから、彼女に限定しなくても良くない?」
「なんでそこにアルファが出てくるの? 付き合うのにそれ必要?」
仲の良い友人の明が驚いている。そこにクラス一のモテ男である櫻井が来た。
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