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瞬き
結局、お昼ご飯は姉ちゃんの弁当とコロッケパンで終わらせ、部活前にどっかでお湯をもらって食べるかと切り替えた。放課後、掃除をしていると、掃除当番が一緒の俺のカノジョの亜理子が耳寄りな情報をくれた。文芸部(彼女は文芸部だ)の部室には電気ポットがあるという。
「亘一くん、何分?」
亜理子がカップ麺にポットのお湯を注いでくれながら聞いてきた。
「あ、五分だ。俺タイマーセットするよ。」
とスマホを出す。コポコポコポ。またお湯を入れる音がして、見ると亜理子が別のカップ麺にお湯を入れていた。
「あれ、亜理子、いつの間に?」
「えへっ、私もお腹空いちゃって、ここに常備されてるの食べちゃおうかって」
「常備って賞味期限とか大丈夫なのか?」
「そこ大丈夫なのがカップ麺の良い所じゃない!って部員が割と食いしん坊だから入れ替えが早かったりして。」
にこっと笑う亜理子が無茶苦茶可愛い。
「やだ〜亘一くんが言う前に1人突っ込みしちゃった〜。」
笑いながらバシバシと亜理子が叩いてきた。痛い。さすがバレー部部長のカノジョは叩く力も強い。いや、マジで痛い。いつまで叩いてくるのだ?これ、大崎(バレー部副部長)並みに痛いぞ。
「おーい、亘一。起きろ、マジで起きろ、もうタイマーなってんぞ。俺食べ終わったし。たった五分で熟睡とか、お前疲れてんのか?」
ハッと目が覚めた。俺を叩いているのは大崎で、カップ麺の揚げの匂いが立ち込めるここは、
「部室!」
バレー部の部室だ。
「おう。部室だ。俺も腹減ったから、体育教官室から電気ポットを借りて、ロッカーの中のを食べたところだ。ほら、早く食え。」
麺をススる。美味しい。目が覚める。だしが胸に染み、糖分が脳に染み渡る。
「俺のカノジョの亜理子はどこ?」
そこ重要。さっきまでニコニコしてたのに。
「はあ?お前のカノジョ?お前いつからカノジョ持ちに。って亜理子って蔵瀬さん?」
うんうんとうなづきながら汁を飲む。飲み終えてカップの上に箸を置き、ありがとうと購買のおばちゃんの顔を思い浮かべて手を合わせてご馳走様をした。
バシっとまた大崎に頭を叩かれた。痛い。
「寝言も大概にしやがれ。蔵瀬さんがカノジョとか、しっかりしろ。本人が聞いたら悲鳴あげて気を失うぞ、バカ。お前、ポット返しとけよ。俺、部活に戻るわ〜。」
夢か。夢だったのか。カップ麺の待ち時間が見せた束の間の幸せな夢。
「夢ってより妄想だよ!いい加減にしろよ!」
大崎、冷たい。 fin
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