6. コロッケ

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(……?)  慌てて電話に出る。 「母さん?」  それは永遠の別れをしたはずの我が子の声だった。 「和希? 今、どこなの?」 「え? 今? 一度アパートに戻って、これから大学なんだ」 「え?」  どういうことだろうか。高速バスを降りた帰り道に、車の事故で死んでしまうのではなかったのか……。  房子はガクガクと膝が震え、その場に座り込む。 「でさ、養成所のパンフと願書、忘れて帰っちゃったんだ。今週中に出したいから、こっちに送ってくれる?」  和希の言葉に返事もせずに、房子は考える。無事に家に帰れたということは、どこかで運命が変わったのか。  でも、房子が作為的に何かしたわけではない。  ということは、和希はこれからも生きていけるのかもしれない。房子の心に希望が芽生えた。 「ね、母さん、聞いてる?」 「あ、ごめん。わかったわ。すぐ送るね」 (なぜ和希は死なずに済んだのだろう?)  それが謎だった。 「ねえ、和希。駅からアパートに帰る途中、通りの右手にコンビニあるでしょ?」 「ああ、あそこね」と和希はコンビニの名前を出す。 「そうそう。あそこには寄らなかったの?」  我ながら変な質問をしていると房子は思う。 「いや、わざわざ渡ることになるし、もう少し行けばアパート側にもコンビニがあるから、行かないな」    では事故の朝はなぜ、渡ったのだろうかーー、房子は不思議だった。
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