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友達にも言えない悩みに押しつぶされそうになると、僕はいつもここに来る。ここにいる時は誰にも邪魔されない。公園の周りには桜の他に、名前は知らないけれど背丈ほどの木々が、今も綺麗に四角く刈られて壁のようにこの公園を覆っている。だから、近くを通りかかる人にも見られることもない。
僕は亜衣姉ちゃんと同じ高校に入学できた。でもこればかりはどうしようもないのだ。
三年という歳の差ばかりは……
そう、僕の入学と入れ違いに、亜衣姉ちゃんは卒業。そして四月には東京の大学に行ってしまう。これまでは同じ学校に通えなくとも毎日のように亜衣姉ちゃんの笑顔を見かけることが出来た。でも、四月からはもう離れ離れになってしまう。
何度も告白しようと思った。でも出来なかった。距離だけでなく、心まで遠くに行ってしまったらどうしようと思うと怖かった。
ーガサッー
壁が揺れた音がして僕は顔を上げた。風も吹いていないのに壁のような木々が動くはずがない。いや、そもそも風なんで吹いていなかった。
顔を上げたその先には、いつもと同じ笑顔で、亜衣姉ちゃんが両手を腰に当てた格好で立っていた。
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