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三択
亜衣姉ちゃんは右手をスカートのポケットに手を突っ込みながら、もう片方の手で僕の肩を押した。
「ほら、少年もこっちを向いて」
言われるままに僕もベンチを跨いで、向き合うような格好になると、僕の心臓は更に痛くなった。このまま顔を近づけて、キスをして、ハグして……なんて妄想が脳裏を一気に駆け巡る。
「じゃーん!これなんだ」
そう言って亜衣姉ちゃんがポケットから出したのはタロットカードだった。同時に反対のポケットからルノルマンカードも出してきた。
「少年は知らないかな。こっちはタロットカード、そしてこっちがルノルマンカードっていってね、占いに使うのだよ」
ーガサガサッー
いや、どっちも知っている。知っているしそれって……
「先にこのルノルマンカードを使って、少年の恋の行方を占ってみようじゃない」
亜衣姉ちゃんはベンチにスカーフを敷いて、片方のケースからカードを取り出すとその上でかき混ぜ始めた。同時にその顔に焦りをにじませる。
「あ、ごめん、その角抑えてて」
それはそうだろう。こんなところでカードをかき混ぜたってすぐにスカーフは皴になるに決まっている。亜衣姉ちゃんは焦りながらもそのカードをまとめて今度はシャッフルしだした。
「こう見えてもトランプは得意なんだからねっ」
いや、それはトランプではないし。
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