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だからと言って本人を目の前にしてーはい、そうですーなんて言えるはずもなく、僕は「さあ、どうかな」などと小声で答えてはぐらかした。
僕の目を睨むように覗き込んでいた亜衣姉ちゃんは、その間息をするのを忘れていたかのように大きくため息をついた後、再度手元のカードをシャッフルし始めた。
「もう、素直じゃないなぁ」
そんなことを口走っていると、再び一枚のカードが手元から飛び出した。これはエン……
「なるほど……戦車が出たという事は、やっぱり告白したいんでしょ。それも遠回しにではなく、それこそ猪突猛進に」
ーガサガサッー
猪突猛進な告白って何だよと思いながらも、僕は耐えきれずに噴き出してしまった。いや、おかしかったのはそこではないのだけれど。
「な、なによ。私変なこと言った?」
「ううん、おかしなことを言った訳じゃないけど」
「もう、真剣に聞いてよね」
この状況で真剣に聞けと言われても、そもそも亜衣姉ちゃんがまじめにやっているのかどうなのか。
「もう……。じゃあ当たっているってことで続けるよ」
そう言いながらもう片方のカードの束に手を伸ばした。
「それでは、少年がこの後どうすればいいのか、今度はこのタロットカードで占ってあげる」
じゃあ今までのは何なんだよ、というのもやめておこう。取りあえず最後の診断まで聞いてみようじゃないか。
亜衣姉ちゃんはその『タロットカード』をシャッフルすると、今度は独り言のようにぶつくさと文句をいいだした。
「もう、なんで飛び出してこないのよ」
しばらくシャッフルすると、諦めたように手を止め、基本通り上から六枚を取り除くと七枚目を手に取って表向きにした。
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