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麻衣がフォローしてくれる。
私だって鬼じゃないんだから、申し訳ないって負い目というか良心の阿責みたいなのはあるわけで。
てゆーか、こんな待ち伏せは反則でしょ。
それでも思わせぶりな態度が一番不誠実だと思うから。海野さんは、キープにするにはまっすぐすぎる。
なのに、とうとう愛は、後ろを振り返ってしまった。
「くるみ、後ろ⋯⋯」
そして、愛に腕を引っ張られて、反射的に私も振り返ってしまった。
海野さんは私を見ていなかった。私に向かって礼をしていた。頭を深く下げて、重役を見送る平社員のごとく、私が見えなくなるまでそうしているかのように、少なくとも私が見ていた一瞬は、ずっとその姿勢のままだった。
そんな甲子園で決勝戦の試合終了の挨拶みたいな。今生の別れみたいな。
ま、最後の別れっていうのは間違ってないか。
私も心の中で、深い深い礼をした。
少なくとも感謝はある。
私を好きになってくれて、ありがとうございました。
私にはまぶしいまっすぐな人。
次は素敵な恋をしてください。
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