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「あっ、あなたのことが気になってしかたありません!」
「……はい?」
私はもちろん、愛と麻衣と先輩たちと、周りにいた無関係の人たちも含めて、全員の声が見事にハモった。
*
公開告白みたいなことになった。
罰ゲームか! 小学生か!
「くるみちゃん、とりあえずここじゃなんだし、外で話したら? な?」
先輩に気遣われて、私と男は食堂の外に出ることになった。先輩は面白がって冷やかしたりしない。さすが大人。小学生とは違う。まあ、痛々しくて冷やかせないというのがほんとのところではある。
しかし、スマートに仕切れる先輩をちょっと好きになった。
私はスマートな言動の人が好きなんだよね。
男はラーメンを食器返却口に返してから行きますと言う。
お願いだからトレーひっくり返さないでよね!
「私、代わりに返してきてあげるから」と思わず言いたくなるくらい男の顔は蒼白だった。
いや、自分だからね、言い出したの。
場所を移したといっても、食堂の外の通路というか廊下。エレベーターホール、自販機コーナーには食事を終えたオジサンたちがたむろしているので、階段がある方の隅のところに場所を取ったのは先に待たされていた私。
一人で男を待つ間、あまりにありえないシチュエーションでどきどきしていた心臓を落ち着かせようと努めた。
「すみません」
小走りで男はやってきた。
会社には作業着の人もいるけれど、男はワイシャツ姿だ。デスクワークの人なのね。名前はもちろん、どこの部署の人かも知らない。
会社の人は顔くらいなんとなく全員くらいは見知ってると思ってたけど、そうでもないのね。
手にこぶしを作って、めっちゃ力込めて握ってる。
まただんまりなので、
「……あの、それで……」
なんで私が促さなきゃないけないの!
たとえばモヤシとか眼鏡とか、いかにも陰キャそうななよなよモジモジした見た目ならともかく、男はぱっと見は日にも焼けて、しっかりとした体つきをしている。
一見するだけなら爽やかなスポーツマンに見えるけど。
なぜそんな煮えきらないの態度なの。イライラが再発する。
「あの、すみません、ちょっとテンパっちゃって……」
と男は頭を掻いた。
ええ、テンパってるのはよーくわかります。
でも何度も言うけど、自分だからね、言い出したの。
「……えっと、あの、いきなりで驚かれたことと思います」
「ええ、まあ」
「偶然、同じテーブルになって思わず……気づけばあなたの前に立ってました」
「はあ……」
意識飛ぶほど? ちょっと怖い。
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