最後の……

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 思えば、あの時の爆風で死んでおけばよかったのかもしれない。そうすれば、勇者などにならずに済んだものを。  確かにこの世界を救った。魔王も討ち倒した。だが、それが結局何だったのだろう。  帰る世界は既にないだろう、かといってこの世界にもすでに居場所はないのだ。私を知らぬ人はいない。だが、誰も私を見てはいない。彼らが見ているのは、物語の中にいる勇ましい私だ。本当の勇者が町はずれのボロ家で病の床に臥せっているなどとは誰も思わない。  どうせ身寄りのない身だ。こうして静かに最期を迎えるのも悪くない。
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