15人が本棚に入れています
本棚に追加
「良かった…」
安堵の溜息を吐きながら、嬉しそうに雪花が口にすると、月鬼も何となく嬉しくなり、無意識に口元が綻んでいた。
そんな2人の様子を見ていた栄達は微笑ましく感じて、クスクスと笑っていた。
「なんだよ…」
ムッとしながらも、どこか照れた表情で月鬼が言った。
「いえいえ、お2人共、仲良しだなって」
栄達がそう言うと、雪花も月鬼も顔を真っ赤にしていた。
「そ、そんなこと…」
「至って普通だろ…」
気恥ずかしさから、お互いが見れなくなり、視線を背けながらそう言った。
「はいはい、分かりましたよ」
栄達は尚も笑いながら2人に言った。
「ひとまず安心ではありますけど、背中の傷はもう少しかかりそうなので、もうしばらくは安静にしていてくださいね」
道具を片付けながら、栄達は月鬼に注意を促した。
「え…まだ動いたら駄目なのか?」
月鬼は不満そうだった。
「駄目です」
栄達はにこりと笑って答える。
「ちょっとくらいは…」
ずっと寝ていたため、身体を動かせずにいた月鬼は、今後のことも考え、早く身体を動かしたかった。
「駄目です!!」
笑顔のまま強めに栄達に言われ、さすがの月鬼も少し怖くなったのか、諦めた様子だった。
だが、栄達はそれでも心配だったようで、
「姫様、月鬼殿がちょっとでも身体を鍛えようとしたら、飲み物にこれを混ぜてください」
と、雪花に何かを包んであるらしい薬包紙を差し出した。
「これは…?」
雪花は渡された包みを不思議そうに眺めていた。
「月鬼殿が何よりも嫌いな薬です」
栄達がにこりと笑ってそう言うと、月鬼が物凄く嫌そうな表情になった。
「栄達…お前、まさかアレ、覚えてるのか…?」
最初のコメントを投稿しよう!