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「姫様の父君に連れられていたので、最初は御子息かと思ったのですが、瞳が月氏一族のそれでしたので驚きました」
栄達はそうして月鬼との出会いを話していく。
既に家族で西都に住んでいた彼らは、雪花の父・秀に連れられた、まだ子供であった月鬼と出会った。月鬼を連れていた意図は、平たく言えば社会勉強であったと言う。
「恐らく、姫様の護衛のための、だと思います。色々知っていたほうが何かと良いですから」
確かに、存在を隠されている月氏一族が一族の外に出て暮らすことはほぼ無い。だが、月鬼のように護衛を務めるとなると、主人を守るために外のことは知っておくに越したことはない。
「ここには色々な物や人が集まりますからね。勉強するにはうってつけです。まぁ幼かった月鬼殿は、色々な物に興味を示している間に将軍と逸れてしまい、そこに僕と兄が居合わせた、というわけです」
そこで月鬼が月氏一族であることを知り、自分達も半分その血が流れていることを明かすと、彼らはすぐに仲良くなった。秀の了解の元、月鬼は滞在期間中、栄仁、栄達の兄弟と多くの時間を過ごし、色々なことを教わった。また、兄弟も母以外から聞く月氏一族の話を興味津々に聞いた。
そして彼らの交流はその後も続いた、とのことだった。雪花の護衛に本格的につくまでは、その後も度々秀の視察に同行することがあったようで、その際に交流を深めたようだった。
「そういう経緯があったのね…」
雪花はようやく腑に落ちた。
月氏一族である月鬼が全氏一族以外に交流を持っていたことを、実はずっと不思議に思っていたのだ。
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