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そして栄達は少しいたずらっぽく笑ったかと思うと、
「そうそう!昔、月鬼殿は姫様のことを“とても可愛いお姫様なんだ。だから絶対自分が守る”って言ってたんですよ」
人差し指を口に当てながら、内緒ですよ?と言った。
「え?!月鬼が?…そんな、まさか」
子供の頃の話とは言え、雪花はまさか月鬼がそんなことを言っていたなんて、想像がつかなかった。
驚く雪花に栄達はクスクスと笑いながら、どこか嬉しそうに話した。
「本当です。月鬼殿は昔から姫様が大切なんです」
それを聞いた雪花は、だんだん頬が熱くなるのを感じた。
「そんな…。だって月鬼はいつも怒るし、からかうし、それに…」
恥ずかしさを隠すための言葉を紡いでいた雪花だったが、その後の言葉を飲み込んだ。
なぜならば、今回の一番の原因である気がしたから。
「頼りないって、戦うには足手まといだって思ってると思うの…。それなのに、私が無茶を言ったから仕方なく…」
情けなくて、悔しくて…雪花は唇を噛み締めながら俯いた。
すると栄達は全力で否定してきた。
「そんなことありません!月鬼殿がそんな風に姫様のことを思うはずがありません!」
雪花は驚きながら、そう言った栄達を見た。
栄達はハッとして、冷静になった。
「あ…すみません、つい…」
「いえ…」
しばらくの間、沈黙が流れる。
先にそれを破ったのは、栄達だった。
彼は静かに話し始めた。
「実は姫様方がこちらに運ばれてすぐ、一度だけ月鬼殿は目を覚ましているんです。ほんの数分でしたが…」
「えっ…?」
初めて聞いた話だった。どうして言ってくれなかったのか、と言いたくなったが、すぐに止めた。
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