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いつからだろう…。
少しずつ意識し始めていた。気のせいだと思って見えない振りをした。
はっきり気が付いたのは、西都に来てからだ。初日に手を繋いで街を散策した。
月鬼と手を繋いで歩いたことなんて、幼いとき以来である。男性の大きな手。逸れないようにとしっかりと繋がれてはいたけれど、どこか優しくて、温かかった。
そして、驚く程自分の心臓が速かった。気付かれたくなくて、必死に平静を装ったけれど、月鬼に気付かれていないか、内心ヒヤヒヤしていた。
だけど私達は主従関係にある。
手を繋いでいれば、傍目からは恋人同士に見えてしまうだろう。月鬼も本当はそう見られるのは嫌かもしれない。
だからそう聞いたのに、まさか、
「雪花が逸れる方が面倒なんだよ」
…なんて言われると思っていなくて、ショックだったのだ。月鬼の中では、私は女ではなく、ただの子供…良くて妹みたいな感じなんだろうか。
そう思い、何となくいじけてしまっていた。もちろん、月鬼は役目のために私といてくれるのだから、私が一方的に思っているだけで、月鬼は悪くない。それに、仮に私の想いを受け入れてくれたとしても、きっと一緒にはいられない。将来的に私は家を再興したいし、月鬼はいずれ一族に戻るだろう。
それなら、何も伝えないでいた方がいい。
この想いは早く消してしまおう…。
そんな風に思っていた。
でも栄達から、月鬼にとって大切な存在である、などと聞いてしまえば、消そうとしていた想いは消せなくなってしまった。
大切にしたい。
守りたい。
ずっと傍にいて欲しい…。
叶わないと知りながら、雪花の心の中はそんな想いで溢れていた。
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