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「せつ、か…?」
月鬼の掠れた声を、それまでウトウトとしていた雪花ではあったが、聞き逃さなかった。
ハッとして飛び起きると、すぐに月鬼の近くまで移動した。
「月鬼…月鬼!私はここにいるよ!」
雪花は月鬼の右手を握り締めながら、必死で呼び掛けた。
月鬼の目はゆっくりと開き、だんだん視界が鮮明になってきたのか、その目に色も戻ってきた。
やがて、雪花の姿をはっきり認識すると同時に勢いよく起き上がり、雪花を抱き締めた。まるで雪花の存在を確認するかのようだった。
「え?ちょっ…月鬼!?」
月鬼の突然の行為に、雪花は驚きを隠せない。
こんなこと、今までに一度もなかった。
「…無事で本当に良かった…」
安堵の溜息と共に吐かれた声からは、意識を失っている間も余程雪花のことが気がかりであったことが伺える。…が、当の雪花はそのようなことを考えている暇はなく、ひたすら困惑していた。
するとそのとき、タイミングが良いのか悪いのか、栄達が部屋に入ってきた。
「あ…申し訳ありません、お休みになられていたのでノックをせずに入ってきてしまいました………え?」
栄達はまず、雪花が起きていることに気が付き謝ると、何かが様子がおかしい。しばらくして彼もようやく月鬼が起き上がっていることに気が付いた。
「え?月鬼殿?!目が覚めたのですね!」
しかし、そう声を掛けられても、月鬼はうんともすんとも言わず、雪花を抱き締めたままであった。
一方、雪花は、栄達に抱き締められている状況を見られてしまったことで、恥ずかしさで顔が真っ赤になり、動けなくなってしまった。
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