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「気にするな。昔馴染みなんだし」
栄仁はフッと笑って月鬼にそう言った。その後、何かに気が付いたようで、周りをキョロキョロと見渡すと、
「ところで雪花ちゃんはどうした?彼女も安静だろう?」
と、月鬼に聞いた。
「いや…水をもらいに行くついでに風に当たりたいって言って出て行ったけど…」
月鬼は呆れたように肩をすくめながら言った。
「直前まで俺のこと物凄く心配そうな目で見ていたと思ったら、急にめちゃくちゃ睨んできてさ…。こんなに長く一緒にいるのに、時々雪花のことが分からなくなるんだよな…」
「……………は?」
栄仁は月鬼の言葉を聞いて、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をした。
「お前…もしかして変なこと言わなかったか?」
栄仁がそう問うと、月鬼はきょとんとした顔になった。
「別に変なことは何も…雪花があまりにも無茶するなって言うから、それは命令かって聞いたくらいで…って、え?」
どうやら月鬼は気が付いたらしい。
「…いや、まさか。こんなやり取りは今までだってずっとしてきたわけだし…」
そう呟く月鬼に、栄仁は盛大に溜息を吐いた。
「そもそもお前さ、“命令”じゃないと雪花ちゃんの言うこと聞けないわけ?」
「いや…そんなことは…」
栄仁の問いに、月鬼はたじろぎつつ答えた。栄仁は、さらに続けた。
「つーかお前、雪花ちゃんがどれだけ心配していたか分かってる?お前が苦しんでいたときなんて、自分だって怪我してるのに、お前のことずっと看病していたんだぞ?」
「は………?雪花が…?」
栄仁の話を聞いた月鬼は、驚いて目を見開いた。
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