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「そうだよ。俺達に助けて欲しい、と頭を下げてきたり、なかなか目を覚まさないお前を見て泣いていたこともあった。…知らなかったとは言え、そんなことを言うとはな…」
栄仁は呆れ顔で月鬼にそう言った。
「なっ…!でも普段のあいつを見たらそんな風には思わないって…」
「…本当にそうか?」
月鬼は反論を試みるものの、栄仁に再度問われ、黙ってしまった。
「お前が見ていなかった部分、見ようとしていなかった部分があるんじゃないのか?少なくとも俺の目には、雪花ちゃんはお前のこと、とても大切な存在だと思っていると思うんだがな…」
「…ダメだ」
月鬼は栄仁の言葉を全て否定するかのように、冷たく言った。
「俺は…月氏一族だから…。それにあいつは全氏を立て直すんだ………だから、ダメだ」
何かを堪えるように、絞り出すような声で月鬼はそう言った。それを聞いた栄仁は何かを察したような表情になった。
「まさか…お前、雪花ちゃんのこと…?」
すると月鬼は、栄仁から視線を逸らし、その表情が見られないようにした。
「いつからだ…?」
栄仁は静かに問う。
月鬼は少し間を置いて、小さく息を吐いた。
「…そんなの忘れた。でも、こんなの、従者失格だろ…?だけど、守りたいんだ…。傍にいる約束をしたから。いつか雪花の夢が叶って、雪花を支えてくれる伴侶が出来たら、俺はそのとき彼女の元を離れるつもりでいるよ」
そう話す月鬼の表情は、栄仁からは読み取れなかった。
「お前…本当にそれでいいのか?後悔しないのか?」
念を押すように栄仁は月鬼に問う。
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