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「去れ。ここはお前達の来る場ではない」
一番大きな獣が、低い声で過激派組織に告げた。
「しゃ…喋った…」
過激派組織の者達も、そして調査隊の者達も、双方が腰を抜かしていた。その中でただ一人、奨だけは、真っ直ぐに美しい獣を目に映していた。
話には聞いたことがあった。
でも、まさか生き残りがいたのか…?
奨は仮にも皇帝の血筋の傍系。
断罪された一族のことは、もちろん聞いたことがあった。
帝国のために働いたにも関わらず、断罪された一族。
奨は全て滅んだと聞いていた。だがしかし、その特徴的な一族らしき者達が今、自分の目の前にいて、助けてくれようとしている。
「もう一度言う。去れ。次は八つ裂きにしてくれる」
獣の目の奥がギラリと鈍く光ったかと思うと、いつの間にか過激派組織の者達を複数頭で囲んで追い詰め、今か今かと、強襲するのを待ち望んでいるかのような空気だった。
恐れを成したのか、過激派組織の者達は突如として、その場から逃げ出した。
奨の部下達は一刻も早く追おうとしたが、彼らの行く手もまた、美しき獣達によって阻まれてしまった。
「全大将…貴方方もここから立ち去りください。貴方様のお人柄は聞き及んでおります。どうか、ここで我らを目にしたことはご内密に…」
黄金の獣は頭を垂れながらそう述べた。
さらに別の獣が口を開く。
「絶えゆく我らが一族をどうかそっとしておいて頂きたい」
それを聞いた奨は、やはり…と予想を確信へと変えていた。
だが…腑に落ちないことがある。
「…助けてくれたことには感謝をいたす。しかし、お主らは、全て滅んだのではなかったのか」
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