1.“全”と“月”

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奨はニカッと笑って言った。すっかり日に焼けた肌とは対象的な白い歯が見える。 「大将…っ!しかし陛下が…!」 部下の一人がそう声を上げると、 「黙れ、と言ったはずだが?」 と言い、再び部下を黙らせた。 「全大将…お話はありがたいが、現実的ではありますまい。我らは帝国の敵とされている…」 向こうのリーダー格が遠慮がちに言った。 「あー!もう!どいつもこいつもうるさい!」 うんざりした様子で、奨は言った。 「それは真実では無かろう?では、もっと堂々とすれば良いのだ!それに、今の皇帝陛下はションベン垂れの頃から知っている、俺の従弟!あいつは俺に頭が上がらない。だから何の問題もない!」 自国の皇帝陛下を“あいつ”呼ばわりしている帝国一の武将に若干引きながらも、全面的に一族を肯定してくれたことで、心が救われるようであった。 「それに、今回の調査隊の選定方法へのダメ出し、というネタもあることだしな…全く、簡単に隣国の過激派組織なんか紛れ込まれるなよってな…」 奨は、はぁ…と大きな溜息を吐きながら、恐れ多くも皇帝陛下に悪態をついた。 すると突然、まばゆい光と共に獣達が消え、代わりに人間が現れた。その者達の瞳は金色をしていた。 彼らは、奨の前に跪いた。 「寛大なる御心遣いに感謝申し上げます。しかし、我々のみではお返事を致しかねる故、長に会って頂けますでしょうか?」 先程のリーダー格の獣と同じ声。 そう…彼らは変化を解き、人型(ひとかた)に戻ったのである。 奨は驚いていたが、すぐに冷静さを取り戻し、 「分かった、参ろう。案内してくれ」 と言って、さらに山奥の月氏一族と対面することとなった。
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