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奨はニカッと笑って言った。すっかり日に焼けた肌とは対象的な白い歯が見える。
「大将…っ!しかし陛下が…!」
部下の一人がそう声を上げると、
「黙れ、と言ったはずだが?」
と言い、再び部下を黙らせた。
「全大将…お話はありがたいが、現実的ではありますまい。我らは帝国の敵とされている…」
向こうのリーダー格が遠慮がちに言った。
「あー!もう!どいつもこいつもうるさい!」
うんざりした様子で、奨は言った。
「それは真実では無かろう?では、もっと堂々とすれば良いのだ!それに、今の皇帝陛下はションベン垂れの頃から知っている、俺の従弟!あいつは俺に頭が上がらない。だから何の問題もない!」
自国の皇帝陛下を“あいつ”呼ばわりしている帝国一の武将に若干引きながらも、全面的に一族を肯定してくれたことで、心が救われるようであった。
「それに、今回の調査隊の選定方法へのダメ出し、というネタもあることだしな…全く、簡単に隣国の過激派組織なんか紛れ込まれるなよってな…」
奨は、はぁ…と大きな溜息を吐きながら、恐れ多くも皇帝陛下に悪態をついた。
すると突然、まばゆい光と共に獣達が消え、代わりに人間が現れた。その者達の瞳は金色をしていた。
彼らは、奨の前に跪いた。
「寛大なる御心遣いに感謝申し上げます。しかし、我々のみではお返事を致しかねる故、長に会って頂けますでしょうか?」
先程のリーダー格の獣と同じ声。
そう…彼らは変化を解き、人型に戻ったのである。
奨は驚いていたが、すぐに冷静さを取り戻し、
「分かった、参ろう。案内してくれ」
と言って、さらに山奥の月氏一族と対面することとなった。
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