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「……ふう……」
どうしてこうも人間は捌きづらいのかね。チェーンソーを使っても、なかなか骨が折れる。
暗闇の中、獰猛な獣の目が光り、ぼくは「もう少し待っててくれよ」と声をかけた。
人間というものは本当に身勝手だ。世界が終わると知れば、動物に餌すら与えない。檻に閉じ込められた彼らは飢え、世界の終わりなど知らないままで、ただただ腹をすかせ唸っている。
仕方ない。可哀想だから、まずは足を一本どうぞ。
切り落とした足を檻の中へと投げ入れると、百獣の王がわらわらと群がり、肉を貪り食いはじめた。ああ、くそ。しまった! 骨をどうしたらいいんだ?
万が一、世界が終わりを告げず、普通の日常が戻ってきたら……いや、大丈夫だ。すべてが終わったら檻の鍵を開けておこう。そうすれば腹をすかせた獣が人間をひきずりこんで食ったと思われるだろう。
アイツの身体をバラバラにして、ぼくは獣たちの『最後の晩餐』を眺める。ぼくの手にはカロリーメイト。人肉とカロリーメイトなら、どっちがいいんだろうね。
そんなことを思いながら、ぼくは口の中でもたつく最後の晩餐をごくりと飲み込んだ。
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