最後の晩餐

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「それで、あの……お礼っていうのも変なんだけど、良かったら今度、食事に行かない?」  彼女はやっぱり驚いたように目を見開いて、今度はぷっと吹き出した。 「坂口さん、そういうのって幻想だと思うんですよ。どうして男の人は白衣の天使が好きなんでしょうね。白衣を脱いだら悪魔かもしれないのに」  そう言って笑う彼女がチャーミングで、ぼくは、その瞬間にまた恋に落ちた。  結局、その時の食事の誘いは断られてしまった。けれど、ぼくはその後も通院を続け、彼女と言葉を交わし──通算五度目の誘いで、ようやく良い返事をもらうことに成功した。  あの晩に食べた食事が、最後の晩餐だったならどんなに良かったことか。  なのに、今ぼくはひっそりと闇に紛れ、カロリーメイトを齧っている。こうなったのは、すべてアイツのせいだ。  津田美咲には付き合っている男がいた。  高杉(たかすぎ)翔平(しょうへい)、彼女が勤める病院の検査技師だ。ぼくも何度かレントゲンを撮ってもらった。やさしそうな面立ちのまあまあのイケメンだ。
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