最後の晩餐

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 だが、問題がひとつ。  彼の左手薬指には銀の輪っかが光っていた。つまり既婚者だ。そして、彼女との関係は不倫にあたる。  ぼくは、彼らが不倫関係にあることを、彼女との初デートの翌日に知った。翌日も、どうしても会いたくて、ぼくは病院の近くで彼女を待っていた。偶然を装い声をかけるつもりだった。  けれど、彼女は裏口から出てくると、キョロキョロと辺りを見回してから職員駐車場へと向かった。彼女は免許をもっていない。不審に思ったぼくは彼女のあとをつけた。そこで、見たのだ。  彼女がアイツの車に乗りこみキスしているのを。  しかも、アイツはまだ結婚して一年も経っていない。なのに、同僚と不倫だなんて、とても看過できる問題ではなかった。  ぼくは一旦、彼女の恋人になることを諦め、友人として付き合いを続けることにした。お酒を飲み、食事をし、時々は映画にも行く。白衣を脱いだ彼女は悪魔などではなく、やはりチャーミングな天使だった。そんな清い彼女を、アイツが汚しているのが許せなかった。  ぼくはタイミングを慎重にはかって、彼女に忠告した。
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