ウォルターとヴィンセント

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 ヴィンセントがアステリアに戻り学園を休んでいる間、ウォルターもまた体調不良で休んでいた。  アンジェリカはウォルターがいないことにホッとして一人で学園生活を過ごした。ヴィンセントの言葉が胸の中に温かな火を灯してくれている。だから一人でも全然平気だ。 (どうして一人ぼっちが嫌だなんて思っていたのかしら。みんなに嫌われているって思わされていたからかもしれない。こうして教室を見回してみると、誰も私の顔のことなんて気にかけていないわ。俯いていようといまいと何も変わらないのなら、こうやって顔を上げていた方がいい)  ふと、教室の壁に掛かったカレンダーが目に入った。 (そういえば来週は私の十八歳の誕生日だわ。ようやく、婚約出来る年齢になる。ヴィンセント殿下が申し込みに来てくださったら、お受けしたいな……)  アンジェリカはようやく若い乙女らしい妄想をすることが出来るようになった。それまでは、そんなことを考えるのはおこがましいと思っていたのだから。  季節は夏を迎えようとしていた。  アンジェリカの好きな夏の花がクスバート家の庭園に咲き誇る中、婚約の申し込みに来たヴィンセントと一緒に散歩する自分を思い浮かべて、珍しく授業が上の空になってしまうアンジェリカだった。
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