誕生日の悲鳴

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 その時執事が慌てて走って来た。 「旦那様! ヴィンセント殿下が至急アンジェリカ様にお会いしたいと、お越しになっています!」 「何だって! 殿下がこんな朝早くに?」 「はい。早朝に申し訳ないが、お嬢様に会わせて欲しいと」 「アンジェ。どうする?」  ヴィンセントの名前を聞いて、少し落ち着いたアンジェリカは泣くのをやめた。 「……お会いします。どうせわかることならば、早くお知らせしないと。殿下がお好きだと言って下さったアンジェリカはもういないのだと……!」  また涙があふれてきたが、気丈にも立ち上がり支度を始めた。  父と母も急いで部屋に戻り、ヴィンセントに会うための準備を執事や使用人に指示してから身支度をした。 「お待たせいたしました、ヴィンセント殿下」  客間に入って来たアンジェリカは下を向いていた。ヴィンセントが近寄ってもそのまま俯いている。 「すまない、アンジェリカ。こんなに早い時間に失礼ではあるが、急ぎの用事だったんだ」 「はい、殿下。何なりと……」 「アンジェリカ、泣かないでくれ。さっきまで泣いていたんだろう? 目が腫れている」  アンジェリカは顔を上げて、ヴィンセントを見た。またしても涙があふれてきたが、懸命にこらえながら言う。 「殿下。私の顔は今朝突然に変わってしまいました。殿下があんなに褒めて下さった顔なのに……全然、別の顔に変わってしまって……こ、婚約を、破棄なさるなら……は、早いうちにと思って……」 「アンジェリカ! 違うんだ、君の顔は変わってなんかいない。以前も今も同じで美しいんだよ」  ヴィンセントが何を言っているのかわからず、アンジェリカの涙はポロポロとこぼれ落ちて止まらなかった。 「アンジェリカ、よく聞いてくれ。君が変だと思っていた顔は、魔法によって見せられていた顔なんだよ」
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