誕生日の悲鳴

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「でも……どうして魔法だってわかったのですか?」 「学園でウォルターと諍いがあっただろう? あの時に僕は僅かだが魔法の気配を感じて、怪しいと思ったんだよ。それで、ゼインに来てもらった。彼は、『白い魔法使い』だからね」 「『白い魔法使い』?」  ヴィンセント以外は皆信じられないという顔をしていた。それもそのはず、この国では魔法使いなんてお伽噺の世界のこと。現実にいるはずがないという認識なのだ。 「魔法は、この世に本当に存在するんだよ。ゼインがその証拠だ。彼は永遠の時を生きる魔法使いなんだ。ただ、あまり人間社会に干渉はしないけれどね。今回のように、魔法が絡む事件の時だけ協力してくれるんだ」 「ではウォルターは……?」 「魔法を不当に使ったとして逮捕されたよ。ウィリアムにも影響を与えたのだからね、罪はかなり重くなると思う。魔法の書もゼインが処分したから二度とこのようなことは起こらないだろう」  アンジェリカはホッとして、足の力が抜けた。 「おっと」  アンジェリカが倒れないようにヴィンセントはサッと抱きかかえた。 「クスバート公爵、今日はアンジェリカを休ませてあげて下さい。ベッドに運びますから、僕が側についていてもいいですか? ……あ、もちろん、護衛も一緒にいますから」 「は、はい! よろしくお願いいたします。殿下、本当に……ありがとうございました」  クスバート公爵は深々と頭を下げた。ヴィンセントに深く感謝し、またアンジェリカに対する今までの自分の態度をしっかりと悔いているようだった。  アンジェリカを抱いたヴィンセントは頷くと彼女を部屋へ運んで行った。
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