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「ウォルターだ」
「な……! ウォルターは、魔法使いだったのか?」
「いえ、恐らく、何らかのアイテムを手に入れたのでしょう。彼は病弱で成長も遅いようだと殿下から伺っております。それはつまり、何者かが彼の生命力を使って魔法を使用しているということを表しています」
「どんな魔法を使っているのか? まさか国家転覆を狙っているのか」
「いえ、どうやら個人的な願いのようです。昨日、ヴィンセント殿下の婚約式に立ち会いましたが、お相手のアンジェリカ様に魔法がかけられておりました」
「アンジェリカに? ああ、でもそれは頷けるな。ウォルターは異常なまでにアンジェリカに執着していた」
「アンジェリカ様の頭上に描かれていた術式によると、アンジェリカ様が十八歳の誕生日を迎える瞬間に魔法が完了するようです」
国王が口を開いた。
「してゼイン殿、その誕生日はいつなのか」
「明日だと、お聞きしました」
重臣達はざわめいた。
「ゼイン殿、どのような魔法がかけられておるのか?」
「まだわかりません。かけた本人の所へ行ってみないと。という訳で、今から強制捜査に入りますので、軍の精鋭をお借りしたい」
「もちろんだ。既に準備は出来ておる」
「では、すぐにモーガンの家に向かわせて下さい。私から合図があるまで屋敷の外に待機しておくように。それでは私はここから行って参りますので」
そう言ってパチンと指を鳴らすと、ゼインの姿は消えた。
「き、消えた……!」
あえて派手な退場をしたな、とヴィンセントは思った。これくらいのことをしないと、魔法だなんて信じてもらえないのだ。
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