白い魔法使い

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「承知しました。ただし、無料(ただ)という訳にはいきません」 「お金? お金ならパパに言えばいくらでも……」 「お金ではありません。それに、このことを家族にも誰にも言ってはいけませんよ。言ったらそれで魔法はお終いですからね」 「う、うん、わかった。じゃあ、何をあげればいいの?」 「あなたの生命力を」 「生命力? なあに、それ?」 「大したことありませんよ。少ーしだけ、あなたの元気を分けてもらいたいのです。あなたは何もしなくていい。この本を枕元に置いてくれれば、私はあなたから少しずつ元気をもらいます」 「……痛くない?」 「痛みなんてありませんよ。ただ、少し疲れやすくなったり、成長が遅くなる程度です」 「そのくらいなら、いいよ。僕、元気だもの。平気さ」 「それと、もし彼女が十八歳になるまでに彼女の心を得ることが出来なかったら」 「出来なかったら?」 「あなたの命は失われます」 「……」 「どうします? 怖くなりましたか? やめておきますか」 「ううん、やる。やるよ! だって、僕がアンジェリカに好きになってもらえばいいんだよね。あと十二年もあるんだから、きっと出来るさ」 「それでは契約成立です。この本を枕元に置き、ここに書かれた呪文を唱えて下さい。それで彼女の姿は醜く変わります」  その夜、枕元に本を置いたウォルターは、言われた通り呪文を唱えた。すると本から黒い影が飛び出し、窓から外へと飛んで行った。
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