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そして卒業の時期を迎え、学園では無事に卒業パーティーが催された。
マダム・リンドのドレスを着たアンジェリカはまばゆい程に美しく、生徒たちや招待客から感嘆と称賛を集めていた。
ヴィンセントから贈られた豪華なティアラが頭上に輝き、薬指には大きなダイヤモンドの婚約指輪がはめられている。
王族の服で正装した凛々しいヴィンセントと共にダンスを踊るとドレスの紫色が様々な変化を見せ、アンジェリカの美しさをますます華やかに彩った。
ーーあの誕生日から二ヶ月、アンジェリカはようやく今の顔に慣れてきていた。
だが、今でも鏡を見るたびに以前の顔を思い出すのだ。長年悩み続けたあの顔。そしてヴィンセントが現れ、励ましてくれてやっと受け入れることが出来るようになり、好きになれたあの顔。
(私には、この経験が必要だったのかもしれない)
アンジェリカはそう考えていた。
(あの六歳のままの私だったら、きっと嫌な人間に育っていたでしょう。美しさが全てだと思い込み、見た目だけで人を決めつけるようになっていたと思うわ。何の努力もしないままで……。辛い思いをしたからこそ、他人の気持ちを考えられるようになった。そして、ヴィンセントに出会えた)
「どうしたの? アンジェ」
ダンスの最中にふと考え込んでいたアンジェリカに、ヴィンセントが優しく尋ねた。
二人はもうすっかり、愛称で呼び合う仲になっている。
「何でもないの。ただ、ヴィンス、あなたに出会えて幸せだなあって……」
ヴィンセントは微笑み、僕の方が幸せだよ、と耳元で囁いた。
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