01 俺様

6/12
前へ
/261ページ
次へ
 書類の確認で少し不安な点があったため、私は隣のデスクの先輩に確認を取っていた。 「その話は必要か?私語はやめろ」  少し話していただけなのに、いつの間にか背後には桐生課長がいて注意される。  整った綺麗な顔で冷たく言い放つので、余計に冷酷さを感じてその言葉が心に突き刺さる。 「今、仕事のことを確認していただけですけど?」  また、いつの間にか背後にいた。  課長のくせに、暇かよ。  単にお喋りしてたわけではなくて、書類の処理で先輩に確認を取っていただけだったので反論した。 「椎名(しいな)さんは何年目ですか?まだそんなことも自分では分からないのか?」  背が高い桐生課長は自然と私を見下す形になる。見下すように視線を下げて、冷たく言い放つ言葉に苛立ちを覚える。 「お言葉ですけど、仕事で確認することは大切だと思います。確認を疎か(おろそ)にしてミスをしたらその方が大問題になりませんか?」  よし、言ってやった。仕事をする上で確認は大切だ。怒られたくなくて上司に確認をせず、それが大きなミスに繋がった新人を何人も見てきた。 「そうだな。確認は大切だ。確認は丁寧に仕事してるということだからな……」  ほらな、俺様課長を言い負かしてやった!  心の中で精一杯の悪態をつく。 「課長(わたし)が言いたいのは、3年目なのにその作業を確認をしなければ分からないのは何故だ?ということだ」 「それは……」 「もういい。この時間が無駄では?仕事に戻る」  私が言い掛けた途中で話を遮り終わらせた。高圧的な口調といい、人を見下した話し方にも腹が立つ。私の脳内は荒立っていた。
/261ページ

最初のコメントを投稿しよう!

352人が本棚に入れています
本棚に追加