あの花が嫌いなこと

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あの花が嫌いなこと

春のある日 「今から花見行くけど、あなたも行く?」 「…行かない」 私は一秒の間をあけ答えた。 「あの子はまだあのことを引きずっているのかしら?」 お母さんの声がよく聞こえる。分かってるなら聞かないでよ 一人にして…あの時行かなかったら良かった 3年前… 「今から花見行くよー。早く下りておいで華凛」 「待って今下りてるから」 お母さんがお弁当の入ったカバンを持ち待っていた。 「あれ、お父さんは?」 「お父さんは先に場所取りに行ったわよ」 「じゃあ早くいかないとね」 靴を履き玄関の外に飛び出した。 「お母さん早く早く」 お母さんの腕を引っ張り、私は花見の場所に歩き出した 「きれいだねー」 花見をする公園に近づいていくと桜が満天に咲いている 上を見ながら歩いていると、横を歩いていた人にぶつかった。 「あっすいませ…」 男の人が走っていった。チラッと見えたけどすごいイケメンだったな。 「あれお父さんじゃない?」 お母さんが指差した お父さんが手を振っている 「早くこっちに来いよ」 お母さんが作った弁当を食べながらたくさん話した。 学校のこと、友達のこと、 「ちょっとお腹いっぱいになったからちょっと歩いてくる」 一人で公園を一周まわろうと歩いていると 今さっきぶつかった男の人が桜の木を見ながら微笑んでいた。 「桜が好きなんですか?」 そう話しかけていた。 男の人は驚いたがゆっくりとしゃべりだした。 「いや、死んだ妹が好きだっただけだよ」 「そうですか…。すいません、いやなこと思い出させてしまって」 「いや、大丈夫だ。自分ももう死んでしまうかもしれないからな」 その言葉に驚いた。まだ若いのに 「じゃあ、死ぬ前に私とこの公園回りませんか?」 男の人は一秒の間をあけ 「いいな」 と言った 「私の名前は華凛です。あなたは?」 「俺の名前は咲夜だ」 そして二人で公園を回り始めた いろいろな話をし あともう少しで一周するところで咲夜はつぶやいた 「もう十分楽しかったな」 「なにがですか?」 ふと後ろを振り向くと倒れていた。 「咲夜さん!大丈夫ですか?」 「誰か?助けてください!」 その声を聴き駆け付けたのか私の両親がやってきた。 「どうしたんだ?って人が倒れてるじゃないか」 お母さんとお父さんが近寄り心肺蘇生などいろいろし救急車に乗せ病院まで運んだが。 咲夜さんは亡くなってしまった。 その時から私は桜を見ると咲夜さんが倒れた時のことが脳裏に浮かぶようになった。 これが収まるのは何年後になるのか あの人を忘れられるのはいつなのか だからわたしはあの花が嫌いだ
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