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 それはアズールだった。襲撃者の男はアズールの攻撃から逃れようと、必死に両手を上空に振り回す。  少しでも身体を動かすと、耐え難いほどの痛みが全身を貫いた。それでもヒースは諦めなかった。ヒースは苦痛を堪えながら、崖の方に向かって全身の力を振り絞り、よたよたと進む。 「おいお前、待て……っ!」  男が逃げようとしているヒースに気がついたときにはすでに手遅れだった。生きるんだ、という強い思いがヒースの本能を突き動かしていた。ヒースは全身の力を振り絞ると、遙か遠い崖の下へと向かって身を乗り出した。  パシャン、と水音が聞こえた次の瞬間、ヒースの全身を刺すような激しい痛みが襲った。この時期の川の水温は氷点下だ。普通だったら冬の川へ飛び込むことなど命取りになりかねない。  無意識に空気を求めて喘ぐヒースの身体は激しい川の流れに揉まれると、いったん川底へ沈み、再び水面へ浮いた。ヒースは意識を失った。ヒースの身体は血を流し続けながら、ゆらゆらとどこかへ運ばれていった。
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