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月光がきらめく湖のほとりで、二人の幼い子どもが固く秘密を誓い合ってから数年後――。
そこから遥か離れたアウラ王都の城の一室では、二人の男が密談を交わしていた。いずれも年齢は五十代くらい、身に着けた衣装は見事で、一人はがっしりとした体形をしており、もう一人は痩せ型、ただし油断のない目が用心深く周囲を窺っている。
「石さまが見つかったというのはまことか! なぜいままでその行方が知られなかった! もしや何者かが石さまの存在を隠したのではなかろうな!」
がっしりとした男は喜色を露わにしながらも、その顔には不審の色がはっきりと浮かんでいる。
「恐れながら、そのようなことはなかろうかと……。石さまについては未だ謎が多く、これまで伝わる伝承以外わからないことが多く存在します。ただ、生まれたときは我々と変わらぬただの人だと聞いております。ある日、回路が繋がるように石さまの奥深くに眠っている力が目覚めるのだと。おそらくは石さま本人も、周囲の人間も何も気づいていない可能性もあります」
痩せ型の男の言葉に、がっしりとした男は不満げに息を漏らすと、わからぬぞ、と睨めつけた。
「貴重な貴石を前にして、目が眩んだとしてもわからんでもないからな」
男は高価な椅子にどっかりと腰を下ろしたまま、ゴブレットに注いだワインを一気に飲み干した。
「我が国に星が堕ちたと予言されてから数年、密かに探らせてはおったが、石さまの行方はずっとつかめぬままだった。ヴェルン王国では石さまを獲得するため、すでに我が国に間諜を送り込んでいると聞く。――ふん、やつらめ、余が気づいていないとでも思っておるのか」
がっしりとした男が何かを考えるようにその瞳に暗い光を宿すのを、背後に控えていた痩せ型の男が静かに見つめる。
「それで肝心の石さまはいつ我が国に到着するのだ」
「いま迎えの者を送っております。じき我が国に到着されるかと」
「そやつは本当に信用できる者なのだろうな。よもや裏切って貴石を独り占めしようと目論まないとも限らぬ!」
がっしりとした男が激昂したように高価なテーブルを叩くのを、痩せ型の男は動じたようすもなく冷ややかに眺めた。
「心配はいりません。きちんとした者に任せております。第一裏切ったとて、いったいどこへ逃げられましょう。わが国を敵に回すとでも……? どうなるか考えなくてもわかりましょう」
男があえて口にはしなかった言葉に、がっしりとした男はふん、と満足そうに息を漏らした。
「ともかく、何としても石さまを連れてくるのだ。貴石は我が国の大切な宝。邪魔立てする者があったら、何をしても構わぬ。もちろん石さま本人であろうともだ」
「御意に」
痩せ型の男が恭しく頭を下げる。闇の中で、ランプの明かりがゆらりと揺らめいた。
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