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「ネトが言ってた。トンイもヒースには勝てなかったって」 「トンイのやつ、守り人になってから急にえばりだしたもんな。昔から一度だってヒースに勝てなかったくせに」 「あれは明らかにおかしいだろ。普通に考えたらトンイが選ばれるはずがない」  少年たちが噂するのは、去年守り人に選ばれた少年だ。ヒースたちよりひとつ年上で、村長の三男だ。トンイは村長である父親を自慢にしており、いつも偉そうな態度を取っているが、正直少年たちの間であまり評判はよくない。 「だけどさ、次の守り人にはヒースが選ばれるってみんな噂している。すごいよなあ。俺もいつか選ばれたいなあ」  守り人に選ばれることは村の少年たちにとっては憧れだ。もちろんヒースにとってもだ。守り人に選ばれて、家族や村人たちを守りたい。 「そういえばさ、今度村祭り、ヒースは誰を選ぶんだ? やっぱりナンサか? 去年あたりから、急にかわいくなったよなあ」 「知っているか、トンイやつ、去年の村祭りでナンサに花を贈って、ごめんさないって断られたんだってよ。ばかだよな、ナンサが昔から好きなのはヒースなのに」 「俺はエリンかなあ。笑ったときに柔らかそうな頬にえくぼがきゅっとできて、かわいいんだよなあ」  少年たちの興味はすでに村祭りの話へと移っている。この国には古くから龍神信仰があり、かつてこの世界は龍神さまによってつくられたと信じている。子どもたちは悪いことをすると、龍神さまがお怒りになるよ、と親たちに教えられ育つのだ。  龍神さまを祀るため、ヒースたちの村では年に一度、新月の夜に村祭りが行われる。満天の星空の下、若者たちは意中の相手へと花を贈るのだ。村祭りの夜に結ばれた二人は永遠の愛が続くと言われているため、意中の相手がいる若者にとっては重要な行事だ。異性への話題で盛り上がる少年たちの話を聞きながら、ヒースは樹の下に佇む小柄な少年の存在に気がついた。ヒースの顔がぱっと輝く。 「シュイ!」
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