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 オースティンはワインが入ったグラスに手を伸ばすと、ぐいっと飲んだ。これからまだ午後の試合があるのに大丈夫なのかと驚くヒースの前で、当の本人はけろりとした顔をしている。 「だが、そこに目をつけた者がいた。ときの為政者だ。いつしか石がいる国は争いもなく、豊かさが約束されると言われるようになった」 「それが”石さまが降り立つ国は、未来永劫栄える”……?」 「ああ、そうだ」  オースティンに勧められたワインを断りながら、ヒースは混乱していた。龍とかときの為政者とか創世記とか言われても、あまりに自分たちとはかけ離れすぎて実感できない。それがどうシュイに関わってくるというのだろう。 「その、石がいる国は栄えるって具体的にはどうしてなんだ? 何か意味はあるのか?」  質問を重ねたヒースに、オースティンが面白そうな表情を浮かべた。 「なんでも石さまが流す涙は貴石になるそうだ。その貴石はこの世に存在するどんな宝石よりも美しく、それこそその数粒で国が潤うほどにな。それだけじゃない、削った石は万病に効くとも長寿の薬になるとも言われている。もちろんただのおとぎ話だろうがな」  ――削った石は万病に効くとも長寿の薬になるだと? シュイのあの石が?  はじめて耳にする話に、ヒースは驚きをもってオースティンを見つめる。ヒースは必死に平静を保ちながらも、震える声で訊ねた。 「……もしもその話が本当だとしたら、石さまはその国にとってどんな意味を持つ? それはたとえば人の命を奪っても手に入れたいと思うものなのだろうか?」 「それはそうだろう」  ヒースの疑問に、オースティンは躊躇うことなくあっさりと答えた。ヒースは自分の顔からざっと血の気が引くのを感じた。
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