残業

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残業

今日は金曜日、時刻は19時を少し回ったオフィス。 同じ営業部の紗栄子と真奈美が、帰り支度を急いでいる。 「木下さん、悪いけど今日は病院の予約があって…この資料お願いして良いかなぁ?」 「あっ、木下さん、私も家族が具合悪くて、ついでにこれもお願いして良い?お礼はするからさぁ…」 「…うん。わかった。」 私は木下 芽衣(きのした めい)24歳 彼氏無し歴24年 性格は真面目で、人見知り。人から頼まれると断ることが出来ない。 自分でも自覚している地味子だ。 紗栄子と真奈美に仕事を頼まれ、断れない私は当たり前のように引き受ける。 特に断る理由もないし、他の用事もない。 そして、今日もこれから残業します。 (----今日は金曜日だけど、終電までには帰りたいな---) カタカタカタカタ------- キーボードを叩く音だけが響いている。 フロアーのあちらこちらで、帰りの挨拶が聞こえ、だんだんと人が少なくなってくる。 パチーンと誰かが電気のスイッチを切る音がして、周りの部署の電気が消された。 電気がついているのはここだけ。 このフロアーに居るのは、とうとう私だけになってしまったようだ。 静まりかえったオフィス。 (…また今日も最後になったか…) 机の中に常備している板チョコを、パキッとかじり、天井を見上げる。 暫らくすると、静かなオフィスに物音がした。 コツコツコツ--- 誰かの足音が聞こえて来た。
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