残業

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「醤油ラーメン2つと、生ビール2杯」 席に着くと、藤堂さんは勝手に注文を済ませてしまった。 醤油ラーメンがお勧めなのだろうか? 私は醤油ラーメンが大好物なので嬉しいが、不思議だった。 「あっゴメン、醤油ラーメンで良かった?木下さん、いつも社食で見かけると、醤油ラーメン食べていたからつい…」 確かに私は、よく社食のラーメンを食べている。 社食の醤油ラーメンは、鰹出しのシンプルなラーメンで、あっさり味で飽きない私好みなのだ。 藤堂さんが、醤油ラーメンを食べている私を知っていたことも驚きだ。 ジョッキの生ビールが先に運ばれた。 キンキンに冷えたビールのジョッキに、ツーっと水滴が流れ落ちている。 何て美味しそうなのかと、喉がゴクリと鳴る。 「それでは、木下さん、お疲れの乾杯だな。カンパーイ」 藤堂さんはジョッキを持ち上げると、私が持ち上げたジョッキにコツンとグラスを当てた。 ゴクリ… 「冷たくて美味しいですね、藤堂さん!」 あまりの美味しさに、憧れの藤堂さんだということを、一瞬忘れていた。 「木下さん、やっと僕の方を見て笑ってくれたね。いつも目を逸らすから、嫌われているのかと思っていたんだ。」 「---そ---そんな---嫌いだなんて----そんなことありません!!」 私が藤堂さんを、嫌いで避けている訳が無い。 どちらかと言えば、恐れ多くて目を合わせたら、失礼に当たるのでは無いかと思い、避けていたのだ。
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