残業

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少し歩くと、目の前に高層マンションが現れた。 入り口までのエントランスが、和風のコンセプトなのか、石畳になっている。 通路の両側には竹が植えられている。 風情のある佇まいだ。 このマンションの最上階が藤堂さんの部屋だ。 「男の一人暮らしなので、むさくるしい所ですが、どうぞお上がりください。」 「お邪魔します。お世話になります。」 少し悪戯な表情をした藤堂さんは、わざと丁寧に挨拶をして招き入れてくれた。 天井の高いリビングはとても開放的で、あまり生活感の無い部屋だ。 むさくるしいどころか、マンションのモデルルームに近い。 白と黒で統一された室内はとてもスタイリッシュなイメージだ。 「木下さん、ワイン飲める?」 「はい。ありがとうございます。」 ワイングラスに白ワインを注ぎ、私に手渡した。 「俺はお風呂とかベッドの用意してくるから、ワイン飲んで待っててね。」 私はワインに詳しくないが、このワインは程よい甘みと酸味がバランス良くとても飲みやすい。 緊張していることもあり、いつもより飲むペースが速くなってしまう。
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