バレンタイン

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九条社長は、ホテルのスウィートを用意してくれていた。 部屋の中には、冷えたシャンパンとフルーツがテーブルに用意されている。 そして更に驚いたのは、部屋のあちらこちらにバラの花が飾られている。 ベッドの回りや、お風呂にまでバラの花が沢山鏤められている。 「優斗さん、凄い豪華なお部屋ですね…九条社長に感謝しなくては…」 それまで何も言わなかった優斗さんは、私の言葉を遮るように、私を抱きしめてくれた。 「芽衣、君には酷い事をしたし、悲しませてしまったね。本当に申し訳ない。」 優斗さんの言葉に、胸がギュッと締め付けられる。 瞳の奥が熱くなってくるのを感じる。 私は言葉を出すことが出来ず、優斗さんを力いっぱい抱きしめた。 久しぶりに優斗さんの腕の中は、とても温かい。 優斗さんの香がして、安心する。 「そうだ芽衣、バレンタインのチョコレートは俺が貰っていいのかな?」 優斗さんがカバンから出したのは、私が会社のロビーで落としたチョコレートだった。 チョコレートを落としたことも忘れていた。
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