残業

8/11
前へ
/111ページ
次へ
私はベッドの上で正座をして、土下座の様に頭を下げた。 私史上、もうこれ以上ないほどの謝罪だ。 「と---と---藤堂さん、いろいろと申し訳ございませんでした。」 藤堂さんはニコリと笑い、私の肩を掴んで起き上がらせた。 「木下さん、そんなに謝らないで---むしろ俺は嬉しかったけどね---」 藤堂さんは、何て優しいのだろう…私のためにきっと気を使ってくれているのだろう思う。 私は居たたまれず、急いでベッドから降りて、帰り支度をしようとジタバタしていた。 「木下さん、今日は何か用事あるの?」 「い---いえ---でもご迷惑になるので、すぐに失礼致します---」 藤堂さんは、いつの間にか自分も着替えを済ませている。 白いTシャツに、タイトなベージュのコットンパンツ、そして手にジャケットを掴んでいた。 なにげない服装だけど、藤堂さんが着るとすごくお洒落に感じる。 そんなことを考えていると、また私は手を掴まれた。 慌てて自分のカバンを取りに行こうとするが、手を放してくれない。 「朝食を食べるだけだから、カバンいらないだろ?ほら行くぞ…」 「-------えっ、朝食ですか?」 藤堂さんは私の手を引いて、家のドアを出るとエレベーターのボタンを押した。
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

299人が本棚に入れています
本棚に追加