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あの窓から自分にむけられた視線・・
死者となったあの老夫婦の、思いのたけが込められて自分に送られたんだ、と智花は唇をかみしめた。
「ワイドショーでやってたけどさ、あの娘さんもついてなかったんだね。子供ができなくて離婚して、両親のためにって都会に呼び寄せて一緒に暮らして面倒見ようとしたのにさ、リストラにあってパートの掛持ちして。そこに追い打ちをかけるように仕事減らされて。経済的に苦しいって感じなければこんなことしなかったよね」
「私も見ました、テレビ・・なんだかやり切れないですね。娘さん、厳しい刑なのかなぁ」
「ん・・殺人、じゃないからね。解剖の結果では心筋梗塞が死因だって言ってたし。死体遺棄と年金をだまし取った詐欺罪とかなんじゃないかなぁ」
「明香里さん、くわしいですね」
「そりゃね、ミステリー作家目指している私としてはそれくらいの知識はありますよ」
弾んだ感じの明香里の声に、智花の顔に笑顔が戻った。
「このお家がどうなっちゃうのかわかんないけど・・お庭の花は今までと変わらず季節季節にきれいな花を咲かせるんだもん。この町に住んでいる間はこの家の前でお庭の花を愛でながらおじいさんとおばあさんに手を合わせます、毎日・・」
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