第20話 ノンフィクション率 90%

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 先生としてはそこは慣れているのだろう。 『はい、逃げない逃げない』と言いながら手を止めることはない。  終わりのあたりはもう、体は楽なのにぐったりだ。  そんな終盤、仕上げで背中を伸ばされる。  左肩と右腰という対角線に伸ばすのだが、これは大変気持ち良かった。  思わず、「あう~」、「ふにゅう~」と押せば鳴る袋のように声が出る。  そして本当の最後に腕の筋。  残念ながらこれは痛かった。  それでもまだ『うぎっ』ぐらいで我慢できる痛さだった。だからつい、しゃべる余裕ができた口が素直な感想をもらしたのだ。 「さっき背中を伸ばされてた時も思ったんですけど」 「はい?」 「なんてゆーか、あれですね。まな板の上で平たい肉の筋切りしてるみたいな感じですね」 「ぶほっ!」  あれ? なんかうけたのかな?  でも腕のマッサージは続けてくれてるから平気だろう。 「今の腕ほぐしなんて手羽先ですよね~」  とたんにマッサージの手が止まり、妙なバイブレーションがかかった。 「(´・ω・`)?」  閉じていた目を開ければ、そこにはしゃがみこんでくず折れている先生。  あれ?  そんなにうけた?  お仕事の邪魔してごめんなさい。  待ちますから施術、最後までお願いします。   了
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