第二十六章 愛ゆえに

2/5
前へ
/153ページ
次へ
 オレンジ色の柔らかな光の下、ベッドに横たわる志乃の姿があった。  冬用の厚い掛布に、彼の体の凹凸が見える。 「良かった……」  ふぅ、と軽く息をつき、章はベッドに近づきながら声を掛けた。 「志乃くん。もう、寝た?」 「……」 「そっか。寝ちゃったか」  疲れたもんね、と返事をしない志乃に独り言を掛け、章もベッドにもぐった。  明かりを消そうと、サイドテーブルのリモコンに手を伸ばすと、そっと触れるものがある。 「章さん……」  志乃の手が、章の手に被さってきたのだ。 「志乃くん。寝てたんじゃ……」  返事はなく、ただその指が、章の指に絡められる。 「……」  もう、言葉は要らない。  二人は唇を合わせ、互いを求めた。
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

272人が本棚に入れています
本棚に追加