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課長の、いつものいびりを、いつもの妄想で耐え抜いた、章。
定時にはさっさとデスクを片付け、狭い社員寮の自室へ帰った。
「早く帰っても、特にやることは無いんだけどな」
室内には、必要最小限の家具しか置いていない。
いつか絶対に引っ越してやる、と考えているので、物は増やさないようにしている。
ルックスは悪くないし、穏やかな性格の章だ。
会社の同僚たちに、食事に誘われることはある。
その中の誰かに、好意を寄せられたこともあった。
しかし、学生の頃から、まともに特定の一人と付き合ったことが、ない。
どうしていいか、解らない。
返事ができず、もたもたしているうちに、その人は他の社員と恋仲になってしまった。
アルファでありながら、どこか気弱な草食系男子。
そんな章の、唯一の趣味は、宝くじだ。
今度こそ、当たるかも。
当たったら、何をしようかな。
庶民の儚い願望を胸に、毎度くじをネット購入している。
「そうだ。今日は、ジャンボの抽選日だった」
もう、当選番号が案内されているはず。
章はスマホを操作し、サイトを開いた。
そして、番号を確認した。
3回、見直した。
そっとスマホを閉じ、ベッドへ潜り込んだ。
そのまま、眠った。
翌朝、起き出して一番に、もう一度当選番号を確認した。
「当たった……。夢じゃない、ホントに当たったんだ……!」
章の購入したくじは、見事に高額当選を引き当てていた。
一等前後賞合わせて、10億円だった。
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