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いきなり婚活、っていうのは、ハードルが高すぎるな。
恋活、くらいは、どうかな?
でも、ぐいぐい迫られるのは、怖いなぁ……。
スマホでマッチングアプリを検索しながら、章はいろんなことを考え、迷った。
そんな中、恋人代行サービスのサイトを見つけた。
いわゆる、レンタル恋人、だ。
「これなら、気軽にデートくらいできるかも」
試しにのぞいてみると、男女色々なタイプのスタッフ写真が並んでいる。
セクシー系に、キュート系。
年上に、年下に、同年代。
章の目は、その大勢の中の一人に止まった。
「小峰 志乃(こみね しの)くん。……この子、いいな」
プロフィールを見てみると、バストアップだけでなく、全身の写真も出てきた。
第二性は、オメガ。
淡い色のサラサラの髪は、ショートカットで爽やかだ。
髪と同じく、少し色素の薄い丸い目が、印象的に見える。
鼻筋が程よく通っており、その下の形の良い唇からのぞく歯は白い。
まだ少年らしさの残る、しなやかな体。
緑の並木や海をバックに撮ったスナップは、どれも素敵な笑顔だ。
「可愛いなぁ。よ、……よし! 挑戦してみよう!」
章は、少し不安を感じながら、だが、わくわくと問い合わせフォームに入力を始めた。
早く、志乃くんに会ってみたいな。
大金を手に入れた章だったが、同時に胸弾む未来も得たような気がしていた。
志乃の笑顔が、自分に向けられているような気がしていた。
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